カーボンロッドアンテナの評価

はじめに

蛾ヶ岳のアクティベーションではJG1GPY局がカーボン釣竿直接給電アンテナを使っておられました。展開も容易でSOTAアクティベーション向きのアンテナです。一方で普段使っているEFHWに比べるとローバンドの性能に課題がありそうな雰囲気でした。
カーボン釣竿直接給電アンテナについてはJI3XOK局がこちらで大変詳細な考察をされておられます。この考察を参考にカーボンロッドアンテナの評価をしてみました。(初稿より一部モデルを見直しています)

カーボンロッドの特性

カーボンロッドはAliexpressで入手しました。長さは8mになります。カーボンロッドの電気伝導率を計測するためにLCRマルチメータDE-5000用のテストリードTL-21を改造して簡易ケルビンクリップを作りました。このテストリードはケルビン接続となっているのですが先端が普通のミノムシクリップとなっており、ケルビンクリップのようにForce/Sense線が分かれていません。接触抵抗の影響をなくすために先端をForce/Senseにバラした上で目玉クリップで竿に固定してロッドの抵抗値を計測してみます。

間隔10cmで1170mΩでした(写真はキャリブレーション前^^)。竿の断面積から電気抵抗率を求めると4.04×10-4Ωmとなりました。セグメント間には導通はありません。一番根元のセグメントで1400pF程度で結合しているようです。

4nec2によるシミュレーション

次にカーボンロッドを4nec2でモデル化してシミュレーションしてみました。セグメント長は73cm、半径は5mmで均等にしました。導電率は先程の抵抗率から求め、各セグメント間の結合容量を根元から先に行くほど減少するようにしています。

1/4λバーチカル

カーボンロッドアンテナでよく使われそうな1/4λバーチカルをシミュレーションしてみました。5mのラジアルを4本つけリアルグラウンドでシミュレーションした結果がこちら。

共振点は11.25MHzでゲインは-2.3dBiでした。次にエレメントを銅にしてシミュレーションした結果がこちら。

共振点を合わせるために全体で1.2m程短縮しています。カーボンロッドアンテナはセグメント間の容量のため銅線を使った通常のエレメントより長めになるようです。同じ共振点でゲインは-0.9dBiと1.4dBi程度の差しかありません。思ったよりカーボンロッドの損失は少ないようです。

釣り竿アンテナとの比較

次に自宅で使っている釣り竿アンテナとの比較のためのシミュレーションをしてみました。まずカーボンロッドをエレメントとし3mのラジアルを3本つけて5m高に展開。共振点は13MHz付近でゲインは3.32dBiほど。同じアンテナで7MHz/14MHzのゲインは各々-1.3dBi/3.59dBiとなりました。

こちらは普段使っている12m程度のワイヤーを釣り竿で展開したもの。共振点も8MHzちょっとまで下がっています。7MHz/14MHzのゲインは各々4.1dBi/5.6dBi。

WSPRによる評価

次に夜の7MHz/14MHzでカーボンロッドアンテナと普段使っている釣竿アンテナでWSPRを使って実際に評価してみます。どちらのアンテナも南向きのベランダから斜め上に突き出した形で展開しています。WSPRは37dBm(5W)で2フレーム分を送信しています。レポートしてくる局数やレポートのSNRからアンテナの性能差を評価してみます。(別途評価ツールを作りました。こちらも併せてご覧下さい)

実験1:7MHz

こちらがカーボンロッドをエレメントにした時のWSPRによるレポート。21局からレポートがあり、一番近い局LOT局のSNRが-21dB、西海岸のKFS局が-12dBとなっています。

こちらは銅線エレメントの結果。30局からレポートと数が増えました。先程のLOT局か-9dB、西海岸のKFS局は-7dBから-5dBとなりSNRも改善しているのがわかります。

実験2:14MHz

こちらは日を変えて実験した14MHzのカーボンロッドアンテナの結果。41局からのレポートがあり、近場はUDB局で-20dB。最遠はドイツの南極基地DP0GVNの-10dBでした。

こちらは銅線エレメントの結果。39局からのレポート。局数自体に大きな差はありません。SNRをみてみると近場のUDB局は-18dBで若干の改善。最遠のDP0GVNは2dBと大幅に改善していますがQSBの影響が強そうです。7MHzの実験結果に比べるとアンテナ間の差はずいぶん小さくなりました。

考察

QSBの影響やレポータ局におけるSNRをみているため直接の比較はできませんが、7MHzで予想されたゲイン低下が実験結果にも現れたようです。一方でカーボンロッドそのものの共振点に近い14MHz帯では顕著な差はなく実用範囲ではないかと思います。
エレメント長が自由に変えられないのでATUなどでマッチングをとるのが前提となるアンテナですが、やはりメインで使うバンドには共振させることが重要そうです。またセグメント間の容量があるので想定する波長より長めの竿を入手した方が良いようです。ちなみに前述のモデルを7MHzで共振するように単純にセグメントのサイズだけ伸ばしていったら全長15m弱になってしまいました(こんな長いの売っていないかな)。

さいごに

手軽さと性能のトレードオフを考えると十分使えるアンテナになると思います。ハイバンドなら8mもあれば十分。セグメント間の導通がない竿を7MHz以下で使うときにはなるべく長い尺の物を選んだ方が良さそうです(これは買ってみないとわからないかもしれませんが)。

おまけ

私のアクティベーションのメインバンドである14/18MHzでラジアルを用意するのが面倒なので、いつも使っているEFHWのトランスに目玉クリップを使ってエレメントをつけてみました。こちらにElecraftのT1チューナを付けて7MHz以上で問題なくチューンできました。ただ手元が電圧腹になりむき出しなので感電には要注意です。今後実際の運用で試してみたいと思います。

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