WSPRを使った簡易アンテナ評価ツール

はじめに

 これまでWSPRを使って色々なアンテナを比較して来ました。結果はいつも表計算ソフトで手集計していたのですが、手間がかかるので簡単な解析ツールを作ってみました。本記事ではWSPRによるアンテナの比較実験のやり方と本ツールを使った解析方法を説明します。

ステップ1.WSPRを使って送信

 まず比較するアンテナをいくつか準備します。リグにアンテナを接続後、WSJT-X・JTDXなどからWSPR2プロトコルによって比較したいバンドで送信します。JTDXであれば以下のように”Mode”からWSPR2を選択し各バンドのWSPR2用の周波数に合わせます。

 次に予め”Tune”ボタンで送信出力を調整してください。1W(30dBm)~5W(37dBm)もあれば十分です。アンテナを接続したら”Enable TX”と”TX Next”を押します。次の送信タイミングからWSPR2によるコールサインの送出が始まります。後の解析で必要となりますので、どのアンテナでどの時刻で送出したか覚えておいてください。2分間の送出が完了したら”Enable TX”を解除し、別のアンテナに切り替え繰り返します。QSBなどがある場合は4分間連続して送出し平均を取っても良いと思います。尚、WSPRでは送信可能なメッセージ形式が限定されていますのでコールサインには’/1’や’/P’などを含まないように設定してください。

WSJT-X User Guide 17. Protocol Specifications

WSPR messages can have one of three possible formats illustrated by the following

examples:

  • Type 1: K1ABC FN42 37
  • Type 2: PJ4/K1ABC 37
  • Type 3: <PJ4/K1ABC> FK52UD 37

ステップ2.WSPRnetで結果を検索

 送出完了後、数分待つとWSPRnetにレポートが上がってきます。こちらをクリックすると検索画面になるので、送出したバンド、コールサインを指定して下さい。またスポット検索期間’In last’は送出した時間が入るようにしてください。なおデフォルトの検索数が50なのでこれも4-500程度まで増やします。最後に’Update’ボタンを押すと検索が始まります。

検索が完了すると以下のように結果が表示されます。こちらのリストを以下のようにマウスで一番下の行まで選択し、Ctrl-Cでコピーしておきます。

ステップ3.解析ツールを使う

 次にこちらから簡易解析ツールを開きます。以下のような画面が出てくるので中央のテキストエリアに先程コピーしたWSPRnetの検索結果をCtrl-Vで以下のように貼り付けます。多少余分な文字が入ってしまっても構いません。

 次にAnalyzeボタンを押すとWSPRnetのデータを解析しプロットの時刻情報を取り出します。次に先程覚えておいた送出時刻とアンテナの種類を以下のように入力します。

 上記の例は「10時02分から10時04分の間は8mのワイヤアンテナ」で、「10時14分から10時16分の間はカーボンロッド」で送出した場合の設定です。WSPRは2分間で一つのシーケンスを送出しますので、ワイヤアンテナの例では「10時02分」「10時04分」の2回分のシーケンスを指定したことになります。1回のシーケンスを指定する場合は開始・終了時刻を同じ時刻にしてください。プロットしたい系列にチェックマークをつけ、最後にDrawボタンを押すと以下のように解析結果が表示されます。

 横軸は各レポータ局までの距離、縦軸はレポータ局が送ってきたSNRを表しています。また2つのプロットで共通するレポータ局のレポートについては折れ線で接続しおよそのSNRの差がわかるようになっています。

 またリポータ局の位置を絞り込むことで下記のように散布図を拡大することもできます。表示するリポータ局までの距離をMin. DistanceとMax. Distanceで指定してください。Annotationをチェックすると各スポットのレポータ局名が表示されます。

評価方法

スポット数による評価

 レポータ局から報告されるSNRは各局の場所におけるSNR(信号強度とノイズ強度の比)です。そのためレポータ局の使用するアンテナや周りの環境に左右されるため直接の比較はできません。しかしレポータ局が受信する信号が強くなればその分SNRが改善し信号がデコードできる確率は高まります。

 上図の例ではSNR-20dBから-25dB・距離7000km-8000kmでワイヤーアンテナ(赤丸)のスポットが増えていることがわかります。これはカーボンロッドでは閾値以下(WSPRだと-27dB程度)だった信号が、アンテナをワイヤーに変えたことで信号強度が上がりSNRが改善、その結果スポット数も増加しています。このスポット数を比較することでアンテナの実力差を客観的にみることが出来ます。

SNRによる評価

 更に伝搬状況が安定している・レポータ局の周りのノイズ環境が変わらないという前提が成り立つ場合は、同じレポータ局のSNRを比較することでアンテナの性能差を予測することが出来ます。

 例えば上図の8300kmの距離にあるKFS局のSNRはアンテナをワイヤーに変えたことで5dBほどSNRが改善しています。プロットではアンテナ間に共通するレポータ局のスポットを線で結んであります。この上下のプロットの差がアンテナのゲインの差を表しています。

さいごに

 DXPlorerにくらべると非常に簡易的なシステムですが普段からWSJT-X/JTDXなどを良く使っている方であれば簡単に試せるツールだと思います。ぜひご活用ください。

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